超伝導とは

超伝導体の上に磁石を浮かせるデモンストレーションの様子。

 

 超伝導現象は、今から100年以上前に発見された現象で、ある種の金属などを一定温度以下に冷却すると、突然、電気抵抗がゼロになる現象です。また、このとき完全反磁性(マイスナー効果)を示すため、磁場を超伝導体内から排除する効果があります。写真やテレビなどで、超伝導体の上に磁石が浮いている現象を見たことがある方も多いと思います。この現象は、マイスナー効果が関係しています。

 

 超伝導はある温度以下で発現する現象ですが、温度以外にも制限があります。それが、電流と磁場です。超伝導は磁場と相性が悪く、強力な磁場中では超伝導としての特性を失ってしまいます。このため、超伝導となるためには温度の制限である臨界温度(Tc)以下、磁場の制限である上部臨界磁場(Bc2)以下、そして、電流密度の制限である臨界電流密度(Jc)以下でなくてはなりません。つまり、超伝導を利用して電気抵抗ゼロの状態で電流を流すには、これらの制限値以下で使用することが必要となります。

 

 超伝導体は世界中で数多く発見されていますが、その中で応用されている材料は数種類と限られています。材料によって、TcBc2、そしてJcに違いがあり、当然のことながらそれぞれの値が大きい材料を使いこなせると、その材料の利用用途が拡大します。現在広く使われているのは、合金で針金と同じように扱えるNbTiという合金系超伝導体です。NbTiはTc=9 K, Bc2 = 12 Tの材料であり、実用的には4.2 K, 8 T程度までのは、取って代わる材料がないほど、コスト、利用技術面で有利な材料です。ただし、特に10 T以上の強磁場超伝導マグネットへの利用の際には、別の材料が必要となります。ここで、Nb3Sn、Bi2223、YBCOなど、超伝導特性の高い超伝導線材の登場となります。その中でも、Nb3Snは使いやすい線材が開発されて50年近く経っており、NbTiの次に利用が進んでいる超伝導線材です。

 

 超伝導の応用は、MRI、リニアモーターカー等がありますが、これらは全て、超伝導体を用いて線材を作製し、これをコイル状に巻いた電磁石として利用されています。一般に、書類を貼るために使うような磁石ではなく、電磁石を使うことで、大きな磁力の発生が可能となります。これを超伝導が持つ「電気抵抗ゼロ」の特性と組み合わせると、非常に大きな電流を流すことができるため、その発生する磁力も大きくなります。これが、「超伝導マグネット」です。超伝導マグネットが発生できる強力な磁力によって、MRIによる体内の画像化やリニアモーターカーの浮上が実現可能になります。

 現在の超伝導応用の中心は、この超伝導マグネットと言えます。現在でも、医療機関でMRIにお世話になった人も多いと思いますが、リニアモーターカーが運用されるようになれば、超伝導がより身近な存在になります。小黒研究室では、この応用をさらに進めて、社会に超伝導を浸透させるための研究を行っています。